やのです。
僕の「リアリティを感じる映像」は、『赤い風船』です。
「リアリティを感じる映像」と言われて、映画を観ているときによく「今のリアリティあるなあ」なんて思ったりするんですけど、あらためて思い出そうとすると意外に出てこなかったり、理由がうまく形にならなかったりして、とりあえずTSUTAYAで端からパッケージを見て回って、辿り着きました。
アルベール・ラモリスという監督の50年以上前に制作された短編映画で、2年前に国内でリバイバル上映されていて、そのときに観ました。
友達のいない少年と赤い風船との友情の物語。
ただそれだけの映画なんですが、とにかく風船が活写されていて、それこそ本当に生きているかのように自由に動き回ります。
比喩表現的な意味の「生きているよう」ではなくて、本当に命を持って生きているみたいに。最初は犬や猫の演技を見たときに近い驚きがありました。
それどころか、だんだんと風船の感情が伝わってきて、途中からはただの驚きが妙な現実感に変わっていく。「本当に風船は生きているんじゃないか」とまではいかなくても、「この風船は生きているかもしれない」までは思っていました、たぶん。これがここ10数年で撮影されたものならともかく、50年も前にあそこまで自然な映像を作る技術があるわけないと思い込んでいたからかもしれないけれど。
それがフィクションだとはわかっていても、その瞬間に僕は赤い風船にリアリティを感じてしまっていました。自分が人間以外のものにリアリティを感じ、感情移入をしたのは、後にも先にもこれだけです。
劇映画はありていに言えば「嘘」なので、自分にとって劇映画の「リアリティ」というものは、嘘である映画を現実世界の出来事に引き寄せる瞬間に感じられるものだと思います。それはファンタジーとかリアリズムとか関係なく。
その「リアリティ」にも、経験則からくるものと想像力からくるものがあると思うのだけれど、『赤い風船』に関しては後者のそれでした。
サイトの予告編でも、わずかながらその感覚は得られると思います→ 公式サイト(音流れます)
あと関係ないんですが、青山真治さん(と思われる人物)が、昨日フィクションについて面白いことを言っていたのでURL載せます。
twitter.com/cooff/status/13619664008
2010年5月10日月曜日
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